5月14日(金)に「Japan IT Week 2014春」へ行ってきました。参加企業の展示以上に、いつもながら、この『展示会の仕組み』に感心します。
この展示会を企画運営しているのがリード エグジビション ジャパン(以下、リード社)という会社ですが、さすが「国際見本市の主催」をなりわいとして成長しているだけのことはあります。
複数の展示会を同時開催するメリット
「Japan IT Week 2014春 」は東西の展示棟に分かれ、以下の11種類もの展示会が同時開催されました。
◇西展示棟
・ 第17回 組込みシステム開発技術展
・ 第3回 ワイヤレスM2M展
◇東展示棟
・第11回 情報セキュリティ EXPO【春】
・第4回 スマートフォン&モバイル EXPO【春】
・第2回 通販ソリューション展【春】
・第8回 Web&モバイル マーケティング EXPO【春】
・第6回 データセンター構築運用展【春】
・第16回 データストレージ EXPO
・第23回 ソフトウェア開発環境展
・第19回 データウェアハウス&CRM EXPO
・第5回 クラウド コンピューティング EXPO【春】
会場案内図(PDF)
個々のテーマでは興味のある人は限定され、集客の規模も限られるところ、11種類もの「IT関連」の展示会を併催することで大量の来場者動員に成功しています。
特に展示社も、複数の展示会にまたがる商品を持っている場合、同時にやってもらったほうが効率的です。そして予算が限られているので来場者数が見込める展示会に絞りたいのは当然です。
これを東京ビッグサイトという大型施設の複数ホールをブチ抜いたフロアにブースを並べることで、来場者が自分の興味以外の未知の企業ブースにも立ち寄れる「動線」を作り出しています。
ひとつの展示会登録で残りすべての展示会を見て回れるというのがミソです。
たとえば「Web&モバイルマーケティング」と「スマートフォン&モバイル」に興味があれば、その間に挟まれた「通販ソリューション」も自然に見てしまいます。
また、見学者が多く、力の入った大型ブースも多い「クラウド コンピューティング」を会場のフロア奥側に横並びにすることで、同じフロアに入っている他の4つの展示会にも立ち寄ることになります。
天井に大きく展示会名は書かれていますが、展示会ごとに明確な境目がないので、当然、面白そうなブースは目に入ってきます。
ほかにも出展社によるPRセミナーの会場をフロアの奥に設置しているのもうなずけます。
あと、受付を済ませると「コーヒー無料引換券」が入っており、その引き換え場所が専門的な展示が多い「西展示棟」の奥にあるというのもちょっとした工夫です。
これだけ多くの参加企業があれば、見学者も直接、お目当ての商品や企業がなくても、ビジネスヒントやチャンスを探しに来る価値が出てきます。
さらに東京ビッグサイトまで時間をかけて出かける理由づけにも、そのまま直帰するいいわけにもできるわけです。
年々出展社が増え続け、見学者が絶えないのも十分に理解できます。
アナログな来場者受付のメリット
これだけの規模なら事前にネット経由で登録できて、会場に来たらすぐ見学できるようにすればいいのに、といつも感じてしまいます。特に「IT関連の展示会」なのですから。
でも、必ず各展示会の受付に並ばせ、係員がひとりずつ「紙の招待状」と「名刺」を2枚預かって受け付けるのです。これによって
- 可能な限り正確な来場者数を把握できる
- どの招待状で誘導されて来場したか分かる
- 「名刺」でより確実な来場者情報を得る
という展示会主催として最も重要なことがアナログだからできるのだと思います。なかなか顔を見せながら自分以外の名刺を「2枚」出すのは難しいでしょう。
※ 1枚なら簡単ですけどね。
これによって出展社には以下のメリットが考えられます。
- かなり正確に来場者数を把握、公表される → 展示会への参加を承認しやすい
- 出展社が配布した招待状で誰が来場したか分かる → 集客の効果測定ができる
- 展示会後、出展社に参加者データを提供できる → 展示会後の営業効率が上がる
ほかにも「受付の行列で活況感を演出できる」のは大きいはずです。
展示する側も、これだけの来客があれば出展した価値があったとやる気が出ますし、見学する側も活気のある展示会に来てよかったと感じることができます。
正直、待たされるのは嫌ですが、いろんなことを考えながら並んでいると結構、発見があります。本来は 11の展示会のどこでも受け付けてくれたらいいのに、きちんと持っている招待状の展示会で受け付けるように指示されます。
これで手前の受付だけが混むのを防いだり、より正確な集計ができるのだろうと考えたりするわけです。
新たなメリットの工夫を重ねている
実は、これと同様の内容は 2009年、まだ「モバイル」も「クラウド」もキーワードになかった時代にリード社主催の「IT専門展」に参加したときに感心して、社内報告書でも紹介しました。
ただし、今回はフリーの立場で参加し、さらに洗練されてきた感じがしたので記事にしてみました。
最初に参加してから 5年の間にも
・事前アポイントシステム
・プロジェクト責任者ご優待
・スマホアプリの提供
などが追加されており、特に「事前アポシステム」「プロジェクト責任者ご優待」は、うまく機能していれば出展社側にとっても、展示会で実際に商談を期待する見学者にも、大きなメリットがあるはずです。
また、5年間、毎年5月ごろ、東京ビッグサイトという同じ場所で開催を続けているというのもメリットで、出展社も参加者も予定や予算が立てやすく、施設側も安心して貸せることになります。
だからこそ会場通路で、次回以降の展示会への出展商談ができるわけで、まるでマンションの「売約済み」シールのように出展が決まったブースにシールが張られ、それを見える場所でやることで出展意欲も湧いてくるのでしょう。
見えない部分のノウハウも凄そう
私はリード社とは何の関係もないのですが、とにかく毎回、展示内容よりも先に、展示会自体に感心してしまうので記事にしてみました。
見学者でも分かるレベルの情報しかなく、関係者には分かりきったことばかりでつまらないかもしれませんが、これほどのまでの規模で、ここに書いたことを実現できているのは本当に凄いことだと思うわけです。
検索すると以下のような記事もありました。
なるほど。見学者には見えないところのノウハウも凄そうです。
こちらの記事もいかがですか?